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2009.07.16 (Thu)

「タイムカプセル」 前編

梅雨明けもしましたね、関東。暑くてどうしようもありません(汗) 美月です。

前回の予告通り、小説を公開したいと思います。
思えばこのブログでまともに小説家っぽい活動をするのは初めてな気が……本館の方に三本だけ小説が置いてありますが、まぁ、放置してますし。
公開できるような作品は結構数もあるんです。でも、ホームページの方に更新するとどうにも、改行タグ<br>を打ち込むのが大変で……小説が長すぎる弊害がココにも。

で、楽なのでブログの方で。
それなりの長さがあるので、前編後編に分けての更新です。今回は前編。

バトンが回ってきていたりしますが、あとキリ番ほったらかしですが、それは次回・その次以降に持ち越しにいたします。ご了承くださいませ……
コメントは、この記事の下のほうでお返しいたします。

 * * *

「タイムカプセル」という小説です。
詳しくは後編を更新した後で、別に執筆後記としてご説明致しますが、今年の文芸部誌に投稿したものです。
メモ帳サイズで、全体43.6KBでした。

批評・感想お待ちしています。前編後編通して読んでいただいてからで構いませんので、ぜひコメントの方からお願いします! 参考にさせていただきます。厳しいことを言っていただいても構いません。か、覚悟はできていますよ! 一応!(笑)

 * * *

コメントのお返事です。


>爆傷様
ありがとうございます。その応援が、実は一番の励みだったりします。
その応援におされての今回の小説投稿ですが、実は結構どきどきでしたり(笑)
チキンですね。

夏の陽気に早くもバテ気味ですが、それに負けず、仰るとおり健康は資本なので、原稿に向かっていけたらと思います!



では、追記からどうぞ。
それなりに長いので注意。

【More・・・】


 昔話をしよう。
 いや、昔話なんていっても、それがかつて昔本当にあったことなのかは、実はわからなかったりする。というのも、その昔話というのが何を隠そう俺の記憶で、次いでその記憶っていうのが何ともあやふやだからだ。いつの記憶なのか思い出せず、そもそも本当にあったことなのか、もしかしたら俺の脳みそが勝手に作り出した捏造記事なんじゃないか、やるなぁ俺の脳みそついに偽りの記憶まで作り出すか、なぁんて――うん、人の記憶というのは実にアテにならないということを、俺は生まれて三度目くらいに思い知ったね。でも人の記憶がアテにならないってんなら、この三度目っていう記憶すらもアテにならない訳だけれど。
 ……何の話をしていたんだっけ?
 そう、昔話。俺の記憶の話。
 その、どうにもいつの話なんだか思い出せない、そもそも本当にあったか以下略――の記憶。こいつがまた奇妙な思い出なんだ。
 場所は鬱蒼と木が生い茂るどこだかこいつもわからない山の中、時間は確か夕方過ぎ。猛烈に暑かった気がする。俺とその他数人、必死こいて山の地面をシャベルで掘っていて、そうして掘った穴に何かを埋めて。埋めた? 何を埋めたのかは記憶の映像の中にうっすらとモザイクがかかっていて見えない、すなわち思い出せない。とてつもなくどうでもいいような、かと思えば当時の俺からすればとんでもなく価値のあるものだったような気もする。で、埋めて。土かぶせて。
 はい、思い出ムービーおしまい。来週もまた見てね!
 ……要は、どっかの山で穴を掘ってものを埋めました、俺含め数人がかりでっていう、そういう記憶。埋めたものを思い出せないのは、もしかしたらそれが超とんでもないもので、脳みそが覚えておくことを拒否して記憶領域から弾き出しちゃったからなのかも知れない。超とんでもないものって――死体とか、死体とか、死体とか? もしそうなら俺のこの記憶は死体遺棄をした思い出ということになる。言われてみれば人の一人や二人殺しかけた気もするし、友達だったはずなんだけれどある日を境にそいつの記憶がまるでないってこともある。それにしたって死体遺棄か。俺が前科モノだったとは。
 ではなく。
 まさか人を殺しなんてしてはいないと思うけれど。ついでに、友達が人を殺したっていう過去もないはずだけど。
 とにかく、その山で穴を掘って(以下略)の記憶が暑い日のものだったからか、こうして夏がきて暑くなると、その訳のわからぬ事実かもわからぬそれを思い出すって寸法だ。
 高校二年生の夏、七月。
 定期試験Ⅱの最終日を終えて午後、俺がクソ暑い中扇風機を回しながら左手で団扇をぱたつかせ、口にはアイスキャンデーを咥え、右手でパソコンをいじっていた時。

 その記憶の解答編っていうのは、唐突に訪れた。



== タイムカプセル ~前編 ==



 突然携帯電話が鳴った。
「うわっと」
 何せ今日、家にはテストが終わってぐうたらしている俺しかいない。今年中学生になった妹はまだ学校だし、両親は仕事中。俺がパソコンでネットサーフィンなんぞをしていたリビングは基本静かだったものだから、突然の着信メロディとバイブレーションに俺は思わず声を上げて驚いてしまった。不覚。そんな間抜け極まりない俺を差し置いて、携帯電話はしつこく着信メロディを奏で続けている。
「はいはーい、誰ですかー……今出ますよー」
 独り言を言いながら食卓の上に置いてあった携帯電話を手に取ると、ディスプレイには随分と久々になる奴の名前が表示されていた。すなわち、

『野瀬睦』

 と。
 ムツか。野瀬睦、通称・ムツ――名前の「あつし」が「むつみ」とも読めるから――は、俺の中学時代の友達だ。ちなみに俺は中学校というものには私立男子校と公立共学校の二つにそれぞれ一年半ずつ通ったことがあるが、こいつは前者、中一から中二の途中まで通った私立男子校の時の奴である。同じバレー部に入っていて、セッターを務めていた。とはいっても、俺が転校する前までは俺共々公式試合に参加したことがないけどな。
 ではなくて。
「はい」
 ムツねムツ、と電話の向こうにいるだろうやけにハンサムな、面食い女子が刹那もおかずに飛びつきそうなイケメン的面構えの元同級生を頭の中で思い浮かべながら電話に出ると、少しして、反応があった。
「……ユキか?」
 ユキっていうのは、俺の私立男子校時代のニックネーム。字面も読みも女と間違われる俺の名前を見て、ムツが決めた女々しい愛称だ。今の学校じゃ俺は「セツ」と呼ばれているが、こうして改めて聞くと、「ユキ」より「セツ」の方が何千何万倍もマシに思えて泣けてくるね。
 といったところで、電話の相手の認識が俺=ユキであることに変わりはない。久しぶりなせいだろう、どこか緊張気味の声で電話の相手が俺であるかどうか確認してきた、もう間違いない俺の元同輩兼チームメイト・ムツに、俺は「ういっす」と答えてやる。
「久しぶりだな、ムツ」
「お、おおお、おうっ。……はーぁ、お前さ、電話出る時に超怖い声で『……ハイ』っつうの、全然直ってねーのな? マジ怖いからさ、やめてくれない?」
 別にそんな怖い声で電話に出てるとは思わないけどな……。
 相変わらずのムツに、俺は一人苦笑してしまう。
 何かこういうの、本当、久しぶりかも。
「別に怖くなんか言ってないだろ、普通だ普通。……で? 本当、すごい久しぶりだな? 何? 元気?」
「ハイパー元気だよ。バレーの練習に日々明け暮れているっさ。また今年もうちのバレー部全国大会出るらしくてさぁ。先輩達とか、あと二年から一人だけレギュラーになったメグとか、すっげー忙しそう」
 メグというのはやはり俺の私立男子校時代の友達で、フルネームを浜野恵という、眼鏡とポニーテールと長身が目立つバレー部の補助アタッカーだ。俺とムツと、練習チームを組んでいた時のチームメイトでもあった。そうか、メグの奴レギュラーになったのか。それはそれは。
「ま、俺はレギュラー落ちしちゃったからメグよりかは暇してるんだけどね……よって、お前に今日電話なんぞをしている訳だ」
 ため息でもついてやれやれなんて言いそうな口調で、ムツはそんなことを言う。嫌なら電話かけてくんなよ、と頭の片隅で文句を言いながら、俺はムツに尋ねた。
「何、お前、何か用があって俺に電話してきた訳?」
「ユキになんか、用がなきゃ電話もメールもしねーよ。つまんない話題だったらすぐ電話切って、メールも律儀に返信してこない奴なんかにさ……そ。用があんの。他ならぬ愛しのユキ嬢に」
 気持ち悪いこと言うな。吐きたくなるような前置きはいいから用件を言え、用件を。
「ほら、そうやってさ。あーあ、お前は昔からそういう奴だよ……はい、用件! ユキ、お前覚えてる?」
 いきなり修飾語がない問いかけをされても困る。覚えてるって何を、と俺は聞き返した。
「中二の夏。お前が転校する前の最後の夏合宿でさ、例の山行って、合宿最終日の夕方に、俺達タイムカプセル埋めたじゃん?」

 ――――。

「……ああ、そんなこともあったっけな。確か」
 不意に記憶と過去が繋がった。
 なるほど、あの山で穴を(以下略)の記憶は、タイムカプセルを埋めた思い出だったのか。しかも夏合宿の時。あの頃俺達は確か全国大会に出場するレギュラーを目指していて、そんなタイムカプセルなんて思い出作りをする余裕があったとは思えないのだが……何をやっていたんだ、中二の俺。
「おおぅ? おいおい、俺に言われるまで忘れてたみたいな言い方だな」
 笑いながら言うムツに、俺は電話口で肩をすくめた。こういう時は、こっちの行動が相手に見えればいいのにと思う。やれやれ、今の華麗なる肩のすくめ具合をムツに見せてやりたいね。
「あながち間違っちゃいないよ。山の中で穴掘って何か埋めたのは覚えてたけど、それがまさかタイムカプセルを埋めた記憶だったとは忘れてたさ。……うっかり死体遺棄でもしたのかと思ってた」
 真面目な話。
 が、電話の向こうのムツはその笑顔を想像するに易い声で豪快に爆笑した。
「死体遺棄ってなぁ? はは、どんな勘違いだよ、ユキ。つーか、冗談言うならもうちょっと笑えない、背筋が凍るような冗談にしとけよな」
 だから、本当だって。
 ……とか言っても信じてくれないだろうから黙ってよーっと……。
「了解。次はお前が携帯持ったままぶっ倒れるようなジョークの一つでも考えておくよ……で、そのタイムカプセルとこの電話と、何の関係があるんだ?」
「……マジで忘れてるのな、ユキ」
 電話口のムツは呆れたような声でそう、今度こそ嘆息した。

「そのタイムカプセル。三年後に掘り出そうっていう話だったじゃねーかよ」

 * * *

 その後ムツから聞いた解答編によると、俺達は三年前、こんなことをしていたらしい。
 三年前、中二だった俺達バレーボール部練習Cチームは、夏休みが始まってすぐにある合宿の時にタイムカプセルでも埋めてやろう、という話をしたらしい。言い出しっぺはそういうイベント大好きのムツ。Cチームはムツと俺を含めて全部で四人だったのだが、そのチーム全員がその意見に賛成したらしく、梅雨明けの近い七月初頭、部活が忙しくなってきた合間を縫ってはあれやこれやと計画を練ったとか。本当、何やってるんだ中二の俺。真面目に練習しろよ。
 ……で、タイムカプセルの中身を決めた俺達は、計画通りにそれを持って合宿先に赴き、合宿であれやこれやと思い出を作った最終日に、その思い出作りの締めくくりとして、山に穴を掘って埋めたそうだ。勝手にモノ埋めるなよ、中二の俺達。人ん家の山だぞ。
 そして、埋めた後こんな決めごとをした――曰く、

 三年後の夏合宿の時、俺達が高二になった年の夏休み――
 このタイムカプセルを開けようと。

「何でそんな『三年後』なんて、比較的近い未来にしたんだろうな? 折角タイムカプセルなら、二十歳とか、きりよく十年後とか、そういう風にしたらよかったのに」
 そう尋ねると、ムツは電話の向こうで再び笑った。
「何でって、お前が言い出したんだよ。『どうせ俺達のことだから、二十歳とか十年後とかにしたら思い出せないんじゃないか』ってさ。だったら思い出せる内がいいってんで、きりよく三年後にしようって決めたんだよ。お前、最後まで五年後とぎりぎり迷ってたけどな……五年だと忘れるかも知れないからって、三年後を選んだのは他ならぬお前だぜ? ユキ嬢ですよ?」
 記憶にございません。
「ははは、だっせー。お前、五年後で忘れるからって三年後にしたのに、三年でも忘れやんの。ばっかでー」
 返す言葉もございません。
「で、そのタイムカプセルを掘り出そうっていう話になってる訳だ」
「そ、ざっつらいと。やー、だってお前、転校しちゃったしさぁ。予想外だったよな? 何せあの時俺達は、また高二で合宿にきた時に掘り返せばいいよね♪ くらいにしか考えてなかったし。よって、こんな電話で打ち合わせなんて面倒くさいこと極まりないことをしなくちゃいけないハメになった訳だ、これが」
 俺の転校のせいか、ムツよ。アレだってやむを得なかったんだし、予測もできない急のことだったんだから勘弁して欲しいね。
 そう言うと、ムツは「わぁーってるよ。だから電話してるんだし」と言ってまた笑った。
「で、俺とメグとミキはだな、まだ学校も同じだし、部活も同じで予定把握してるからいいんだけど、問題はお前よ。……ユキ、夏休み暇してる?」
「まあ、それなりかな」
「じゃあさ、俺達が合宿終わった後に、四人で旅に出ませんか? 題して『三年前の俺達に会おうよツアー』! ま、多分日帰りだと思うけどさ。朝早く出て、帰り夜遅くって感じ? 俺達外泊できるほど金ないし」
「そりゃ、あのバレー部続けてるんじゃバイトだってできないだろうっていうのは、想像つくけどな」
「そ。あ、そういえばユキはバイトしてんの? してるんだったら給料で立て替えておいてくれてもいいんだけどさ――」
 そんないつ返ってくるかわからない金、無利子で貸す訳にいくか。ついでに俺はまだバイトもしてねぇ。
 ニヤケハンサム野郎・ムツにそう突っ込みを入れて、それから少しばかり日程の打ち合わせなんかをしてから、俺は電話を切った。
 ふむ、三年前の俺達に会おうよツアー、ですか。
 三年前のタイムカプセル云々以前に、俺にとってはバレー部の友達連中に会うのが久しぶりだ。ムツとは電話するばっかりで何だかんだ会っていないし、後の二人は年賀状のやり取りとたまのメールが関の山。実際、転校してから初めて全員で会うんじゃないか?
「三年ぶりの再会か……くさいねぇ」
 ネットサーフィンを再開する前、俺はそんな独り言を言いながら、携帯電話のスケジュールに予定を一つ書き込んだ。七月、夏休みが始まって大体一週間後。

 七月二十四日、俺は、友達と、三年前の俺と友達に、会いに行く。

 * * *

 迎えた七月二十四日は朝から快晴だった。
 南林間に自宅を持つ俺は、猛暑日になるだろうと予想しない方が難しいほどに照り付けてきている太陽の下を最寄駅まで自転車を走らせ、小田急線に乗って相模大野駅を目指した。今日の最初の待ち合わせ場所は、Cチームの一人が住んでいる相模大野だ。
 その相模大野に住むメンバーは、その名を服部実紀という。「実紀」をしっかり「さねのり」と読めたそこの君、素晴らしい。俺は最初、そしてムツも、この名前を見て「みき」と読んだ。よって彼の愛称はミキだ。随分と可愛らしい呼び名だけれど、その呼び名がどんなものよりもふさわしいことは、ミキ本人を見てもらえれば一瞬で理解してもらえるだろう。
 相模大野駅で電車を降り、改札を抜けずにぼーっと待っていると、しばらくして見える改札を通って駆け寄ってくる小柄な人影。
「ユキーっ。久しぶり!」
 言って手を振る動作が、三年前と全然変わっていない。思わず、苦笑して――
 それから俺は、ついに目の前にやってきたミキの姿に唖然とすることになった。
 だって、どう思う?
 正面から俺をちょっと上目遣いに見てきている元同級生の男子が、町の男の十人に八人は振り返るような美人になっている、なんて。
「びっくりしただろ? だもんね。俺、ばっちり三年前から全くって言っていいほど身長伸びてないもん」
 Tシャツにジーンズという簡単な格好のミキのことを、一回見ただけで男だと判断できる奴はいないはずだ。それくらいミキは可愛い。それは出会った頃からで、あまりの可愛さに男子校であるにも関わらず告白する先輩が後を絶たなかったほどだ。そのミキが可愛いのみならずかなりの美人になっていたもんで、俺はびっくりしてしまったという訳。
 背中の中ほどまでかかる長い髪を、ミキお気に入りのハーフアップに。
 整った顔立ちはよく見れば男なんだけど、ぱっちりとした目やにこっと笑う笑顔はやっぱり可愛い。うん、可愛いです。
「……ホント、小さいままだな、お前」
「実際には三年前と比べて二センチくらいは伸びてるんだけどね……髪も伸びたと思わない?」
「今度気分転換にばっさり切ってみたらどうだ? 肩くらいにさ」
「うーん。夏は暑いし切りたいのはやまやまだけど、俺ってば短いのは似合わないからなぁ」
 言って考えるように首をひねるしぐさまで可愛いとは、神様、彼を男に生まれさせたのは貴方の最大の罪です。
 そんなミキは、バレー部ではマネージャーをしていた。本当は生徒会の書記会計を希望していたらしいが、あれこれと事務や管理をこなしていくミキには、生徒会役員よりもよっぽどマネージャーの方が合っているように思う。メグにバレー部に連れて来られて以来、俺達Cチームの専属マネージャーみたいな立ち回りだったミキは、俺達のバレーにとって欠かせない存在だったと言えよう。
 何せ、いるだけでこの存在感だ。
「そういうユキも、髪伸ばしたのかい? ゴムでくくって、気取っちゃってさ」
「別に気取ってはいないけどな……俺もミキと同じ理由だよ。短いのは似合わないんだ」
「ふぅん。確かに、髪長い方が短いのよりもとっつきやすい感じだけどね……会ったばっかりの頃のユキなんて、いっつも仏頂面してて話しにくかったもん。髪が短いと余計に性格キツく見えてさぁ。よっぽど、そっちの方が似合ってるよ」
「さんきゅ」
「うん」
 会話しているだけで、身体中が浄化されていく感覚。ミキが持つその浄化作用が、俺達に悪い影響を及ぼす訳がない。
「行こうか。ムツとの待ち合わせ場所、町田だろ?」
「うんっ」
 二人で電車に乗るが、同じ車両に乗っている乗客の目には一体俺達はどんな風に映っているんだろうね。まさか男子校の元同級生だと思う人はいないだろう。中学生か高校生の男女二人組、あるいは恋人同士に見えている人も少なくないはずだ。いや、恋人同士は言いすぎか。というか、何を考えているんだ俺は。
「そういや、ムツからお前と相模大野で会って、町田で落ち合おうっていうのは聞いてるんだけど……あと、メグは?」
 あの電話の後、三日ほどしてムツからメールがあった。そこで指示されたのは、ミキと相模大野駅で待ち合わせてその後二人で町田駅に来いということだけだ。メグ――浜野恵は横浜住まいで、その待ち合わせの話には何も噛んできていない。
「メグは町田でムツと待ち合わせてるはずだよ。ほら、横浜線でさ」
「ああ……そっちか」
 別に、俺とミキに気を遣ってくれた訳ではないか。
 何せ俺とミキにも色々あったし。うん、バレンタインのほろ苦い思い出は忘れられないさ。
 相模大野駅から町田駅へはたったの一駅だ。ミキと二人きりの電車旅はすぐに速度を落とし、JR線と小田急電鉄線が乗り入れている駅へと入っていく。

 * * *

「おっせーぞお前等! どこで道草食ってるんだよ! 道草なんてどこ行ったって大して旨くねーぞ! 雑草だ雑草! 道端の雑草食うくらいならうちの庭に生えたぺんぺん草でも食いやがれ!」
 待ち合わせ場所へミキと二人で赴くと、ムツが三年前に比べ大分磨きがかかっているイカサマハンサムスマイルで、タイムカプセルを掘るために持参したらしい大げさまでにでかいシャベルを振り回してきた。隣でミキが苦笑し肩をすくめる。同感だよ、ミキ。
「ムツ、駅だぞ。んなもん振り回すな。通行人にぶつかったらどうするんだ」
 半分呆れながら言ってやると、声だけなら二週間ちょっとぶりになるムツはシャベルを俺の脚にヒットさせて、
「んなもん、俺様のシャベルがぶつかるようなところを歩いている通行人Pが悪いんだよ!」
 さいですか。普通に痛ぇよ。
 満足したのかシャベルを肩に担ぎ上げてにかっと笑ったムツをさておいて、俺はじわじわと痛みを発する脚をさすりながら、ムツの少し後ろに立っているもう一人の待ち人に目を向ける。そこにすっくと、まるでそこが自分の指定席であるかのように立っていた長身の男は、俺と目を合わせて出会った頃とまるで違わぬ微笑みを作ると、「やぁ」とやたらと爽やかな口調で言った。
「久しぶり! ユキ」
「…………おう、久しぶり」
 が、変わってなかったのはせいぜいその微笑みとひらりと手のひらを晒した所作くらいさ。他の部分のあまりの変貌振りに、俺は正直驚きを隠せなかった。驚きすぎて思わずすぐに返事が返せなかったくらいだ。
 浜野恵。
 今俺の目の前でミキ同様のラフな格好を晒している長身のエセ優等生面野郎は、Cチームで補助アタッカーを務めていた、且つ俺達の中で一番バレーに長けていたそいつ、通称・メグで間違いない。ただ、記憶の中のメグと目の前のこいつはあまりにも違いすぎていた。メグといえば、昔はその長身プラスちょっとムカつく優等生面によく映える、細いフレームの眼鏡とばっちり結んだポニーテールがトレードマークだったのが……今はコンタクトにしたのか眼鏡なし、髪もばっさり切って肩よりほんの少し短い辺りで切りそろえていた。ものすごいイメチェンだ。雰囲気がまるで違いすぎる。
「全然違うだろ? どっちもバレーやるのに邪魔だから、今年レギュラーになったのを機にイメチェン兼ねてやってみたんだよ」
「……随分と思い切ったんだな、メグ」
 さっきのミキにはあまりに変わっていなくて、且つよく見たら超変わっていたので驚いたが、今度のメグには百八十度近く変わっていてびっくりさせられた。でもこうして会話してみると、見た目こそそこら辺のちまっとスポーツができる兄ちゃん風になったこいつも中身は大して変わっていないことがわかって、何となく俺はほっとしてみたり。
「そういやメグ、少し身長伸びたか?」
「あ、バレた? うん、三年前と比べると十センチ近く伸びてるよ。そろそろ百八十超えそうな感じかなぁ。ユキは、……何か縮んだ?」
「悪かったな、どーせ大してでかくなってねーよ」
 あとは、この頭一つ分の身長差はそんなに変わってないな。……そこは変わっておけ俺よ、と、未だに百六十センチくらいで伸び悩む身長を俺は心の中で嘆いた。こういう時には牛乳が恋しいね。
「まぁ、積もる話も色々あるだろうけどさぁ、」
 和気藹々という感じになってきたところで、携帯電話を取り出して時刻を確認したムツがシャベルを肩から下ろして言った。
「そろそろ行かねぇと、帰り真夜中になるぜ。もしもしお三方、今日の目的忘れてやしませんでしょうね? 題して『三年前の俺達に会おうよツアー』! ……おら、さっさと行くぞ! 話は道中、電車の中ででもすればいいだろ。俺は野宿するほどの勇気はないからな! 何が何でも日帰りだ! 今日は時間との戦いだぜ!」
「勝手に一人で戦ってろ」
「おっ、久々のユキの突っ込みだっ」
「何か懐かしいなぁ~」
 これで大体、朝九時少し前。
 ムツのやたらテンションが高い台詞に俺が突っ込みを決めたところで、俺達は久々になる再会の挨拶もそこそこに、どんどん気温を上昇させていく真夏の空気の中を歩き出した。
 四人全員がオールスター、足並み揃えていざ。
 ――かつての俺達に会いに行きに、ね。


[前編 了]
[後編に続く]

15:15  |  小説・キリ番  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

『タイムカプセル 前編』拝読させていただきましたー。

きびしめの意見でも可ということで、ひとつだけ。
冒頭で、せっかく『何かを埋めた記憶』という謎が提示されているのに、すぐに解消されてしまっているので、その後、埋められたものに対する興味が薄れてしまいがちです。会話文中にでも、『中身が何か?』という疑問を持たせるような伏線を張っておくのも悪くないかもしれません。

とはいえ、非常に読みやすく、エネルギーを使って書かれているのも十分に伝わってきました。つか、むしろ参考になります。
文章の長短にもメリハリが効いていて、なんだか心地いいですね。
あと、ぱっと見で誤字が見当たらないのはすごいです。気を使っているのが分かります。
タイムカプセルというモチーフも王道で、安定感があります。

以上、感想ですが、今の俺に言えるのが、こんな程度で申し訳ない限りです。

後編、楽しみにしています。
爆傷 |  2009年07月16日(木) 17:27 | URL 【コメント編集】

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